なぜですか

書きたいと思ったことを書きます

作文に効く本

ふだん日本語で文を書く際や、日本語への翻訳をする際に有用な本などを紹介します。

筆者は副業で翻訳(おもに伊英→日)をしています。日本語への翻訳を主に行っているので、日常的に日本語文を書く機会に恵まれています。また、本業の範囲内で企業内での日本語母語話者向けの作文勉強会を主催しました(その内容はそのうち別で記事にします)。ここでは自分が作文について学ぶために読んだもののうちで、とくに良かったものを紹介していきます。

本多勝一『日本語の作文作法』

こういう系統の記事では必ず名前の挙がる本。係り受けや修飾語の順序、句読点の打ち方や助詞の使い分け、典型的な悪文の紹介、レトリック、最終章では取材についてまで幅広く触れられている名著。1982年に初版が出て、2015年に新版が出された。『実戦・日本語の作文技術』という続編もあり、こちらも新版が出ている。

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岩淵悦太郎『悪文』

1960年代に書かれた、悪い文の例とそれがなぜ悪いのかについて説明された本。文例はやや古いものが多いが、説明は現代にも通ずるものがある。巻末の『悪文をさけるための五十か条』と題された一覧もとても良い。

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結城浩『数学文章作法』

理系の論文を書く際の注意点などがまとまった本。しかしそれだけのための狭い範囲のものではなく、語句や文や段落、論理的にまとまった構成にするための階層構造などについて説明されている。『推敲編』では、読者がなぜ迷うのかについてや、文や構成をどう修正すべきなのかについて書かれている。書き方について書かれた本は多いが、「推敲」について書かれたものは少ないので、それだけでも貴重な内容。

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野田尚史・野田春美『日本語を分析するレッスン』

日本語について自分で手や頭を動かして考えるための問題集。筆者はこれを勉強会でテキストとして使用した。話し言葉と書き言葉、マンガの言葉、落語、お笑いはなぜ笑えるのか、なぜ会話が失敗するのか・・・などについて、分析して考えることができる。

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野村進『調べる技術・書く技術』

ある物事について書くときに、そのための取材の心構えや手法、取材後の書き方や考え方について述べた本。筆者が仕事で文章作成していた際に拠り所を探して読んだもの。自分の作品に向き合うためのもの。

原稿のよりどころは、あくまでも自分の取材ノートである。録音資料も、取材ノートに書き写すか、パソコンで活字にし別刷りの形で綴じておく。あなた独自の作品は、ここからしか生まれない。(122ページより)

当時この文に心を掴まれたようで、ページの端が折られている。

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黒木 登志夫『知的文章術入門』

論文のための明晰な文章を書くための基礎や、わかりにくい文の例や理由、文の構成(このあたりの内容は数学文章作法に似ている)、情報収集の方法やツールの紹介など。末尾の3章は英語の使い方に当てられている。

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時事通信社『用字用語ブック』

新聞を書く記者のためのハンドブック。主に新聞常用漢字での表記を参考にしたいときに使う。それ以外にも、間違えやすい言葉や差別語・不快語、肩書や敬称などの書き方、漢字や英字の略語や二十四節気、時差表や度量衡の換算表が掲載されている。後半の内容は少々ビジネス手帳っぽい。

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三省堂『てにをは辞典』

日本語のコロケーション辞典。ある言葉の使い方に迷ったとき、それが一般にどのように使われるかを知りたくて使う。たとえば「食糧」なら、それが「食糧が」となる場合にあとにどのような言葉が続くか、「食糧を」「食糧に」「食糧難を」「食糧難に」についてはどうか、などが記載されている。

姉妹辞典に『てにをは連想表現辞典』というものもあり、こちらはある言葉から連想する表現について調べることができる。たとえば「調べる・確かめる」なら、「味見」を見出し語に「料理を味見する、味つけを見る、毒味をする」や、ほかにも「聞き出す」「聞き質す」「訊く」「研究」「検査」「検証」などなどが見出し語に立てられている。個人的には使用頻度は低いが、どうしても言い回しに悩んで悩み抜いて、行き詰まりを打破したいときに使うことがある。

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物書堂アプリ

こちらは紙ではなくアプリケーションで、いわゆる電子辞書アプリ。コンテンツを購入する必要があるものの様々な高品質の辞書が使えて、さらにそれらを横串で検索することができて非常に便利。また、MacOS版ではペーストボードに追加された文を自動的に検索してくれる機能も追加されていて、文をただコピーするだけで即座に意味を調べることができる。機能や辞書の追加も継続して精力的に行われていて、今後古くなる心配が少ないのも魅力的。

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Mouse Dictionary

こちらはChrome拡張機能。マウスオーバーするだけで英単語を検索することができるようになる。辞書にはEIJIRO(記事執筆時点で495円)などを使用する。詳細な使い方や動画は以下を参照。熟語の検索もできるので、検索漏れによるミスが減りとても有用。

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このほかにも読んでいない作文関係の本などはあるので、読んだり思い出したりした際には追加していきます。以上。