書かずにはいられない生き物
北原白秋の『フレップトリップ』や『五足の靴』、和辻哲郎の『イタリア古寺巡礼』を見るにつけ思うにつけ、世の中には書かずにはいられない生き物たちが存在することを改めて実感する。何かを経験すればそれを書き留め、何かを思えばそれもまた書き留め、そのうちのいくつかは世に出され衆目を浴び、またいくつかは蔵されているのだということがなんとなく想像できる。
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城北古書展
神田神保町で、5/4〜5の日程で城北古書展が開催されていた。どうやら毎年恒例のようで、しかし自分の場合は今回が初の立ち寄りだった。何がきっかけで知ったのだったか、おそらくは Twitter だったと思う。
会場は、神保町から御茶ノ水に向かう方面に建っている東京古書会館というビルで、その地下1階だった。入り口には店主らしき人たちが並ぶレジがあり、その脇を通った奥に、仮設の棚が並んでいる。書籍は2010年台の新しいものから江戸時代のものまで幅広くあり、またそれ以外に、古いパンフレットや掛け軸、切手などなどがわらわらと置かれていた。そんな棚の間を中年〜老齢の男性・女性たちが腕組みしながら歩き回り、あるいは手にとって見、あるいは棚を舐めるように眺めるなどしていた。
古書の価格は概ねどれも安くなっていて、普段1000円で出ている本が500円、200円のものが100円などと、だいたい通常の半額になっていた。理由はわからないが、持ち帰るのが面倒なのでここで売ってしまいたいのかとも思われた。うぶ荷*1もあったそうだが、それとわかるような目印があるわけではなく、素人の自分には全く見分けがつかなかった。
そこでは、普段200円がついている新書を100円で2冊買い、大型本を1冊購入した。和漢書もかなりお手頃価格で出ていたので、記念に購入しようかとも思ったが、漢文が平易に読めないことと、興味のわく内容のものが見つけられなかったので、今回は手出ししないことにした。城北展で書籍を購入すると、普通のスーパーの袋に本を入れてくれる。これもまたなんとなく非日常的で気に入った。
神保町古書巡り
古書会館を出ると、スーパーの袋を提げたまま神保町の古書店街に戻った。自分の場合はいつもだいたい同じルートで巡っていく。神保町の表通りにある澤口書店の巌松堂ビル店に始まり、西へ交差点を目指して向かいながら店先や店内を眺め、信号を渡ったら古書センタービルを登り、降りたらひとつ南の通りからまた東に戻っていき、やがて三省堂書店へたどる。SFを探すときにはアットワンダーや羊頭書房を覗くこともあるが、この日の目的はそれではなかったので、店先の廉価本の棚を眺めるにとどめた。
これをだいたい3周ぐらいすると、なんとなく疲れてくるので、喫茶店を探すことになる。この日も神保町で有名なさぼうるへダメ元で向かってみたが、「GW中は休業」との張り紙に出迎えられ、ほかに店を探す気力も残っていなかったので、そのまま神保町での休憩を諦めて帰路についた。
そんなに本を読むほうではない
と言うと奥さんからは全力で否定されるのだが、世の中には自分以上にもっと読む人がいることがわかっているので、本当に自分は読むほうではないと思っている。書棚にはたくさん本が溢れているし、身の回りでは読むほうだとも思ってはいるのだけれど、自分は読むのも遅いし、何時間も集中して読める本が減ってきたしで、「読むほうです」とはおこがましくて名乗りづらいと感じる。
冒頭の「書かずにはいられない生き物」と対応して、「読まずにはいられない生き物」と自称することも考えられなくはないが、どうか。
*1:まだお客の目に触れていない商品